もう何杯目だろうか、Aくんは新しいカクテルを注文し、それを飲み干した。
”外国の血が入っている人はやはりお酒に強いのかな"などと、こんな大変な話を聞いた後で自分の頭の中をよぎる。
自分の過去のトラウマ、飲まなければとても冷静に話せる内容ではないのだと思った。
”もっと残酷な裏切りが僕を待っていたんだ”
この言葉の後、Aくんは口を開かなくなり、沈黙が続いた。
また新しいカクテルが運ばれてきた。
テーブルにそれが置かれると、ふとAくんの横顔に目がいった。
間接照明とテーブルの真ん中に置かれたロウソクの火がAくんを照らす。
その横顔は切なく、悲しそうな目をしていた。
不謹慎だと分かっていても、それでも僕はそのAくんの美しさに見とれてしまった。
Aくん:義父に乱暴される事が日課になってきたある日の週末、僕が学校から帰って来るより早く義父が家にいたんだ。
ハッと我に返り、Aくんが口を開いた事に気付く。
Aくん:何か嫌な予感がした、何かがいつもと家の中が違っていた。
未来 :どう違ったの?
Aくん:わからない、でも何かが違ったんだ。
Aくんが言うには、いつもは自分より早く義父が帰って来る事はなかったという。
帰ってすぐにその異様な雰囲気に耐えられず、早足で自分の部屋に逃げる様に駆け込んだ。
”コンコン”
部屋のドアがノックされる音が聞こえた。
”誰?”と聞くと、それはやはり義父だった。
要件を訪ねると、”手伝ってほしい事がある”から下の奥の部屋に来てほしいという事だった。
その部屋は普段はあまり使われておらず、大きさとしては家の中でリビングとキッチンの次に広い部屋だったが、
家の中にあるすべての部屋の中で一番日の光があたらない部屋の為、半分物置のような形で使われている部屋だった。
季節ものの服や昔弟と一緒に遊んだおもちゃ類、本やピアノまである。
いつもキレイに掃除されている部屋ではあるが、用事がない限りあまり立ち入る部屋ではなかった。
そんな所で何を手伝ってほしいんだろう、何か物を出すのを手伝ってほしいと言う事だろうか、それともまた乱暴されるのだろうか。
でもまだ夕方、弟ももうすぐ帰って来る、弟がいる時は乱暴はされないからきっと大丈夫。
そう思いながら家に帰ってきた時から感じていた嫌な予感を感じながら義父の待つ下の奥の部屋に向かった。
部屋に近づくと、部屋のドアの前で義父が待っていた。
「ちょっと自分の部屋に忘れ物をしたから、先に入って待ってなさい」
そう言うと義父は自分の部屋に早足で向かって行った。
何かないと出せない様な物なのかと不思議に思いながら先に部屋に入った。
Aくん:すると、とんでもない裏切りが僕をそこで待ってたんだ。
未来 :とんでもない裏切り?
ドアを開けると、そこは自分が知っているいつもの物置部屋とは明らかに雰囲気が違っていた。
いつもは日が当たらないせいか、少しホコリとカビのような湿気った空気が漂い、
夏でも少し肌寒さを感じる物置部屋だったはずの場所が、異様な熱気と湿度に包まれ、部屋中に煙の様な物が充満していた。
さらに外からの明かりを完全にシャットアウトしているせいか、いつもは感じられる窓からのかすかな光も感じられず、照明のせいか部屋中が赤色に染まっていた。
「やあ」
その異様な部屋に気を取られていたせいで、そこにいる”何か”に気がつかなかった。
「こんにちはボク」
「おぉ〜、やっぱりハーフの子は可愛いね」
義父と同じくらいの年齢の見知らぬ中年男性が2人いるのが分かった。
真っ暗な部屋を赤い照明で照らしているせいか、2人に気がついた時は目が慣れておらずよくわからなかった。
しかし、少し目が慣れてくると、その2人の姿を見て何をするつもりかは一目瞭然だった。
すでに2人とも全裸で、男達の興奮度を物語るかの様にそれは盛り立っていた。
足下には支配する為の様々な道具が置かれ、拘束する為の道具も準備されていた。
すぐに部屋を飛び出そうとした。
するとそこには、母の前では笑顔で優しい義父ではなく、まるで人が変わった様に自分の欲のすべてを注ぐ欲望の固まりとなった義父が目の前に立ちはだかっていた。
「どこに行くんだ?お客様に失礼だろ」
あとから聞かされた事だが、義父は夜遅く帰ってくる時が時々にあった。
それはいわゆるハッテンバに行き、自分好みのウケを探してはプレイを楽しんでいるものだった。
それらのハッテンバで何人かのタチの顔見知りが出来、帰りにその顔見知り達とお酒を飲む事になった際に自分との事を漏らしてしまい、自分達も混ぜてほしいと言われたのがきっかけだったと言う。
”手伝ってほしい事がある”と言ったのはこういう事だったのかと思った瞬間、激しい絶望を感じた。
それまであんなに酷い事をされても、心のどこかでまだ義父を信じていたのにと思った。
そして、長い悪夢はそこから始まった。
つづく
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